この記事の結論:自費診療の説明をするカウンセリングルームは、「診療室の音が届かず、待合に声が漏れない位置」に置き、壁を天井裏の上の床(スラブ)まで立ち上げることがいちばん効きます。そのうえで扉のすき間、天井裏の抜け、モニター・LAN・照明を開業前に決めておくと、患者さんが落ち着いて話を聞ける部屋になります。
執筆・監修:櫨本 健一(ハゼモト建設 代表取締役/一級建築士)
カウンセリングルームはなぜ「配置と防音」が大切なのか
カウンセリングルームは、患者さんが費用や治療方法を落ち着いて聞き、考えられることがいちばんの役割です。インプラントや矯正、セラミックなどの自費診療では、費用や期間、治療の流れを説明する時間が長くなります。そのとき、隣の診療室からタービン(歯を削る器具)の音が聞こえたり、自分の声が待合に聞こえていると感じたりすると、患者さんは質問をためらいがちです。
反対に、外の音が気にならず、話の内容が外に漏れない部屋なら、患者さんは安心して疑問を口にできます。先生やスタッフも、声の大きさを気にせずに説明できます。部屋の広さや家具よりも、まず「どこに置くか」「どう音を止めるか」を先に決めることをおすすめしています。
受付・待合・診療室からの位置の考え方
おすすめは、受付から近く、待合とは壁や廊下を一つはさんだ位置です。受付で予約や会計をしたあと、待合を通らずに入れると、ほかの患者さんの目線を気にせずにすみます。
診療室とは、できれば消毒室や収納などをはさんで離します。ユニット(診療台)のバキューム(唾液や水を吸う装置)やタービンの音は、壁一枚では思った以上に伝わります。コンプレッサーなど音の出る機械は、機械室か屋外の囲いに置き、カウンセリングルームの隣にしない計画にします。
また、患者さんの通り道とスタッフの通り道を分けておくと、説明の途中で器具を運ぶスタッフが扉の前を行き来することが減ります。動線の分け方は、歯科医院全体の間取りと一緒に考えます。
位置ごとの違い(比較表)
カウンセリングルームの置き場所は、主に次の3つのパターンがあります。それぞれの向き・不向きを表にまとめました。
| 置く場所 | よい点 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 受付の近く(待合と壁一枚へだてる) | 案内しやすく、会計や予約へすぐつなげられる | 待合側の壁と扉の遮音をしっかりとる |
| 待合と診療室のあいだ(廊下側) | 診療の前後どちらにも使いやすい | 廊下の人通りと、診療室の音の両方に配慮が必要 |
| 診療室の奥(個室のとなり) | 静かで、ほかの患者さんの目に触れにくい | 診療室の音が伝わりやすいので、収納などをはさむ工夫をする |
声が漏れない遮音のつくり方
遮音でいちばん大切なのは、音の通り道(すき間)をなくすことです。壁を厚くしても、扉や天井裏にすき間があれば声はそこから漏れます。
壁の構成
間仕切り壁は、天井の高さで止めずに、上の階の床や屋根の下地(スラブ)まで立ち上げます。壁の中にはグラスウールなどの吸音材を入れ、石こうボードを二重に張ると、声の伝わり方がやわらぎます。壁のコンセントやスイッチを、隣の部屋と背中合わせの同じ位置に付けると、そこが音の抜け道になるため、位置をずらします。
扉
扉は、すき間を減らすパッキン(ゴムの部材)付きのものや、閉めたときに下のすき間をふさぐ部材の付いたものを選びます。引き戸は使いやすい反面、すき間ができやすいので、遮音を優先するなら開き戸も候補になります。扉にガラスを入れる場合は、目隠しと厚みにも配慮します。
天井裏の抜け
見落としがちなのが天井裏です。天井の上がつながっていると、そこを通って音が隣の部屋へ回り込みます。テナントでは、上の床まで壁を立ち上げられるか、天井裏の配管やダクトの位置、ビル全体の空調・防災につながるB工事(先生負担・オーナー指定業者の工事)との取り合いを、着工前にビル側と確かめます。換気口やエアコンのダクトも音の通り道になるため、経路を曲げる、消音タイプの部材を使うなどの工夫を検討します。
モニター・LAN・照明は開業前に決める
カウンセリングルームでは、レントゲンや口の中の写真をモニターで見せながら説明することが多いため、モニターの位置と配線を先に決めておくことが大切です。
モニターは、患者さんと先生が並んで見られる位置か、向かい合って座ったときに両方から見える壁に付けます。壁に付ける場合は、下地(ねじを留める補強の板)を壁の中に入れておきます。電子カルテや画像を見るためのLANは、予備の口と空配管(あとから線を通すための管)を用意しておくと、機器を増やしたときにも対応しやすくなります。
当社では着工前に、電気・水道業者、電子カルテ・レセコンのIT業者、医療機器メーカーが現場に集まる「設備の情報共有会」を開き、LANやコンセントの位置を確かめます。さらに、壁や天井のボードを張る前に、コンセントの位置やモニターの高さを先生に現場で確かめていただきます。
照明は、診療室のような白く明るい光より、少し温かみのある色で、まぶしさを抑えたものが落ち着きやすいです。手元の資料や模型が見やすいよう、テーブルの上は明るさを確保し、壁や天井の間接照明でやわらかさを足すと、話しやすい雰囲気になります。
広さの目安
広さは、テーブルと椅子3〜4脚(患者さん・ご家族・先生やスタッフ)が置けて、モニターの前で無理なく座れることが目安です。お子さんやご家族と一緒に説明を聞く方もいるため、椅子を1脚足せる余裕があると安心です。
ただし、必要な広さは、説明に模型や資料をどれだけ使うか、車椅子の方を想定するかで変わります。テナントでは区画の形によって取れる広さが限られるため、診療室やユニットの配置と一緒に、図面で何通りか比べてから決めます。
事例:よつば歯科クリニック 門司院(北九州市門司区)
よつば歯科クリニック 門司院は新築の歯科医院です。自由診療に合わせ、「清潔感」と「高級感」が伝わる色づかいにしました。患者さんとスタッフの通り道も分けています。院長からは、コストダウンできる提案、トラブルがなかったこと、仕上がりのきれいさを評価していただきました。
歯科医院全体の計画は木造のデンタルクリニック、ほかの医院は施工事例一覧もご覧ください。
よくある質問
Q. 既存の歯科医院を改修して、カウンセリングルームをつくれますか?
A. つくれる場合があります。空いている個室や収納を使い、壁を上の床まで立ち上げて扉を替える方法などがあります。診療を続けながら、休診日や診療時間外に区画ごとに工事を進めることもできます。
Q. 防音はどこまでやればよいですか?
A. 普通の声で話して、待合や廊下で内容が聞き取れない程度を目安にします。壁・扉・天井裏のすき間をなくすことが基本で、費用とのバランスを見ながら、どこを優先するかを一緒に決めます。
Q. テナントでも壁を天井裏まで立ち上げられますか?
A. 立ち上げられる場合がありますが、天井裏の配管・ダクトやスプリンクラーなどビル側の設備との取り合いがあります。B工事にあたる部分もあるため、着工前にビル側と確かめます。
まとめ
カウンセリングルームは、受付から近く待合・診療室から離れた位置に置き、壁・扉・天井裏のすき間をなくすことで「声が漏れない」部屋になります。モニター・LAN・照明は開業前に位置を決め、ボードを張る前に現場で確かめることが大切です。北九州市・下関市・福岡市で歯科医院の開業や改修をお考えの先生は、間取りの段階からご相談ください。
クリニック アーキテクト プロでは、企画設計・プランニング・概算見積(たたき2案)まで無料でお受けしています。カウンセリングルームの位置や防音の考え方も、図面を見ながらご提案します。無料相談はこちらからお気軽にお問い合わせください。