この記事の結論:歯科医院の床下配管は、新築ならピット(床を掘り下げる)、テナントや店舗跡なら二重床(床を上げる)が選ばれることが多く、どちらも排水の勾配から必要な深さ・高さを逆算するのが基本です。トラブルの多くは「詰まり」「結露」「騒音」「点検できない」の4つで、掃除口・点検口の位置と機械室の換気・メンテナンス動線を設計の段階で決めておくと防ぎやすくなります。

執筆・監修:櫨本 健一(ハゼモト建設 代表取締役/一級建築士)

歯科医院で床下配管が大切な理由

歯科医院は、ユニット(診療台)ごとに給排水・エアー・電気・バキュームの配管が床下を通るため、床下のつくり方が使い勝手と維持費を左右します。

一般的なクリニックに比べて床下を通る管の数が多く、しかも排水は勾配(水が流れるための傾き)をとらないと流れません。開院後に床をはがして直すのは診療を止める大きな工事になるため、最初の設計で通り道と点検の方法まで決めておくことが大切です。北九州市・下関市・福岡市で歯科医院をつくる際も、この考え方は変わりません。

ピットと二重床の比較表

ピットは床をそのままの高さにできる代わりに基礎工事の段階で決める必要があり、二重床はあとからでもつくれる代わりに床が高くなります。

項目ピット(床を掘り下げる)二重床(床を上げる)
つくり方基礎やコンクリートの床に溝や掘り込みを設け、その中に配管する既存の床の上に束(床を支える脚)を立て、合板を張って床下空間をつくる
向く計画新築。基礎の設計と同時に決められるテナント内装、元コンビニなど土間の店舗跡
床の高さ周りの床と同じ高さにでき、段差が出にくい床上げの分だけ高くなり、入口にスロープが必要になることがある
天井の高さ影響しにくい床上げの分だけ天井が低くなる
あとからの変更溝の位置が固定され、ユニットの移設はしにくい床をはがせば比較的変更しやすい
注意点溝に水がたまらない工夫、湿気対策歩いたときの音や床のたわみ、点検口の配置

どちらがよいかは建物の条件で変わります。テナントの場合は床を掘れないことが多く、二重床が前提になることがほとんどです。

二重床の高さは排水勾配から逆算する

二重床の高さは、いちばん遠いユニットから既存の排水管までの距離と勾配で決まります。

排水管は距離が長いほど、勾配をとるために床下の高さが必要になります。元コンビニなど土間の店舗跡では、土間をはつらず(削らず)に床を250〜300mm上げて配管の通り道をつくるのが目安で、水まわりが既存の排水から6mを超える場合は350〜400mmほど必要になることがあります。いずれも目安で、案件によって変わります。

床を上げると入口に段差ができます。スロープは1/12勾配が基本で、300mm上げると長さは3.6mほどになります。床下は、プラスチック束の上に構造用合板28mm、捨て張り5.5mm、フロアタイル2.7mmを重ねる構成です。店舗跡ならではの注意点は元コンビニ・店舗跡を歯科医院にで詳しく解説しています。

掃除口・点検口の位置を現場で決める

掃除口と点検口は、詰まりやすい場所の近くに、開けられる位置で設けることが基本です。

  • 掃除口:排水管の曲がり角や合流部など、詰まりやすい場所に設ける管の口です。図面だけでなく、配管が見える段階で現場で位置を決めます。
  • 点検口:床や壁に設ける開け閉めできるふたです。ユニットの下やキャビネットの裏など、物を置かない場所に配置します。
  • 空配管:将来ユニットを入れ替えたり増やしたりするときのために、あとから管や線を通せる空の管を入れておきます。

点検口の上に造作家具や重い機器が載ってしまうと、いざというときに開けられません。家具の配置と点検口の位置を、同じ図面で重ねて確かめます。

コンプレッサー・バキュームの機械室

コンプレッサー(圧縮空気をつくる機械)やバキューム(吸引装置)は、音・熱・換気・メンテナンス動線の4つを考えて機械室にまとめるのが基本です。

音への配慮

音の出る機械は、診療室や待合から離した機械室か、屋外の囲いに置きます。機械室の壁に吸音材を入れる、扉のすき間を減らす、機械の下に防振材を敷くなどで、振動や音が建物に伝わりにくくなります。

熱と換気

コンプレッサーやバキュームは運転中に熱を出します。機械室が狭く換気が足りないと、室温が上がり機械に負担がかかる場合があります。給気口と排気口を設け、必要な換気量はメーカーの資料で確かめます。

メンテナンス動線

フィルター交換や点検のため、機械の周りに作業できる空きをとり、業者が診療中の患者さんの前を通らずに出入りできる位置にすると便利です。機器の入れ替えも考えて、扉の幅を機械の大きさに合わせます。

よくあるトラブルと予防策

床下と機械室のトラブルは、設計と施工の段階で多くを予防できます。

トラブル主な原因予防策
排水の詰まり勾配不足、曲がりが多い配管、掃除口がない勾配から床下高さを逆算する、曲がりを減らす、掃除口を設ける
結露冷たい配管と湿った空気の温度差、床下の換気不足配管の保温、床下や機械室の湿気対策
騒音・振動機械の置き場所、防振の不足機械室か屋外の囲いに置く、防振材・吸音材を使う
点検できない点検口の上に家具や機器がある、点検口がない家具配置と点検口を同じ図面で確かめる、空配管を用意する

着工前には、電気・水道業者、電子カルテ・レセコンのIT業者、医療機器メーカーが現場に集まる「設備の情報共有会」を開き、ユニットの位置と配管ルートを確かめます。山口県下関市のよつば歯科クリニック ゆめモール下関院でも、着工前に配管とLANの位置をこの方法で確認しました。万一不具合が起きたときは、診療を止めないことを第一に、休診日や診療時間外にも対応します。

よくある質問

Q. テナントでもピットにできますか?

A. ビルの床を掘ることはできないことが多く、テナントでは二重床が前提になることがほとんどです。床の高さや排水の位置はビルごとに違うため、着工前にビル側と確かめます。

Q. 二重床にすると天井は低くなりますか?

A. はい、床を上げた分だけ天井は低くなります。照明や空調の納まりも変わるため、床上げの高さと天井高をセットで確かめます。

Q. コンプレッサーは診療室の近くに置いてもよいですか?

A. 音や熱が出るため、診療室や待合から離した機械室か屋外の囲いに置くのが基本です。配管が長くなりすぎないよう、距離とのバランスで位置を決めます。

まとめ

歯科医院の床下配管は、新築ならピット、テナントや店舗跡なら二重床が選ばれることが多く、どちらも排水勾配から深さ・高さを逆算します。掃除口・点検口は現場で位置を決め、将来に備えて空配管を入れておきます。機械室は音・熱・換気・メンテナンス動線の4つで考えると、開院後のトラブルを減らせます。改修を予定している先生は増築・改修の前に確かめたい7つのこともあわせてご覧ください。

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