こんにちは。北九州市・下関市・福岡市を中心に、歯科医院などの建築を手がけているクリニックアーキテクトプロ(ハゼモト建設)の櫨本健一です。

「患者様が増えて手狭になった」「新しい診療科目を導入したい」「バリアフリー化を進めたい」。こうした理由で、医院の増築やリフォームを考える先生は少なくありません。

いざ計画を進めようとすると、銀行や医療機器メーカーの担当者の方とは別に、建物そのものについて確かめておきたいことが出てきます。

このコラムでは、建築の現場の実務に焦点を当て、増築・改修の前に確かめておきたい7つのことを、順に説明します。

増築・改修を成功させる最初のステップ

なぜ竣工図書・確認申請書が重要なのか

竣工図書(建物が完成したときの図面や書類一式)と確認申請書(工事の前に、役所や審査機関の確認を受けた書類)は、増築の計画を立てる土台になります。既存の建物の構造や面積、確認を受けた内容が分かるからです。

築年数が古い建物や、先代の院長から引き継いだ医院では、建てたときの図面や確認申請書が見つからないことがあります。書類が無いからといって、増築や改修ができなくなるわけではありません。

確認申請書が無い建物で、増築・改修の前にすること

書類が無いときは、建物の今の状態を、図面と写真から組み立て直すところから始めます。

建築士による「現況調査」

そのような場合は、まず建築士による「現況調査」を行います。建物の今の状態を図面と写真に整理し、「どこまで増築できそうか」「どこに補強が要るか」を、計画の前に確かめます。

現況調査でまとめた内容は、その後の設計や申請の土台になります。書類を探すことと並行して、現況調査を進めるのが、最初の一歩です。

届出なく行われた過去の増改築

小さな増築でも、確認が必要になる場合がある

過去に、役所へ届けずに倉庫などを増築している建物もあります。増築や改築は、小さな面積でも建築確認が必要になる場合があります。

新しい工事を計画するときは、その前に、既存の部分がどういう状態かを確かめます。

既存部分の状態を、計画の前に確かめる

新しい増築の計画は、既存の建物が今どういう状態かを前提に組み立てます。計画の前に既存部分を確かめておくと、あとの手続きが進めやすくなります。

状況に合わせて、手続きと書類を整える

届出の無い増築部分があった場合は、現状を調べたうえで、必要な是正と書類の整え方を、建築士が整理します。そのうえで新しい増築の計画を進めます。

営業を続けながらの工事は可能か?

診療を続けながらの工事

診療を休めない医院は多く、「工事をしながら診療を続けたい」というご要望は少なくありません。診療を続けながらの部分改修は、よつば歯科クリニック姪浜院(福岡市)でも行いました。

営業を続けながらの工事は、計画次第で進めることができます。大切なのは、患者様とスタッフの動線を分けること、そして段階的な工事計画を立てることです。

騒音・振動・粉塵への配慮

営業中の医院の増築では、次の3つを計画の段階で考えます。

  • 工事の場所と診療の場所の動線を分ける:仮設の壁や養生で、通路と工事の場所を分けます。
  • 音や振動が出る作業の時間帯を調整する:診察の時間を避けた組み方を、先生と相談して決めます。
  • 粉塵を診療のエリアに入れない:養生と換気の計画を、工事の前に立てます。

仮設や段階的な工事

診療のスペースを確保しながら、いくつかの段階に分けて工事を進める方法があります。どこを先に工事し、どこを診療に使い続けるかを、図面の上で順に決めていきます。

水回りと動線は、計画の初めに決める

工事の範囲が、患者様のトイレなどの水回りや動線にかかる場合は、仮設の設置や工事の順番を、計画の初めに決めておきます。外壁の改修では、足場で玄関まわりが囲まれることがあります。患者様の出入りの通路を、足場の計画の段階で決めておきます。

打合せのイラスト

営業を続けながらの工事は、難しさのある工事です。事前の計画と、現場での細やかな対応、そして患者様とスタッフへの配慮を第一に考えることで、無理のない進め方ができます。

工期はどれくらいかかる?

新築とは違う、改修工事ならではの段取り

新築工事が「ゼロからの工事」であるのに対し、改修工事は「既存の建物を生かしながら、どこまで手を加えるかを決める工事」です。そのため、新築に比べて工期が読みにくいことがあります。

営業中の医院では、大きな資材や廃棄物の搬入・搬出を、診療時間の外に行う必要があります。これも工期に影響します。工期は、工事の「量」だけで決まるわけではありません。

診療科ごとの設備と工期

診療科によっても、工期に関わる要素は変わります。たとえば歯科では、チェアユニット、給排水設備、コンプレッサーなど、特殊な設備の移設や新設が伴います。これらの搬入・設置は専門の業者との連携が欠かせず、その調整に時間がかかることがあります。

診療科ごとの設備(チェアユニット・給排水・コンプレッサーなど)の設置順を、日単位で工程表に落とします。

工程の組み立て

工期を縮めるうえで効くのは、計画の段階で、先生・スタッフ・工事側がよく打ち合わせておくことです。

「小さくても工程は同じ」。これは、私が先生方にお伝えしている言葉です。部分的な増改築でも、「解体→基礎→躯体→内外装→設備→引き渡し」という大きな流れは変わりません。その各工程をどう進めるかを、あらかじめ組み立てておきます。

費用は新築より割高になる?

解体費・仮設費など、見えにくい費用

「新築で建てるより、増築のほうが安く済むのでは」というご質問をいただくことがあります。増築・改修は、新築より割高になるケースもあります。解体や仮設、既存部分との取り合いなど、増築・改修ならではの費用が加わるためです。

これらの費用は、見積もりの段階では見えにくいことがあります。

新築の単価と、改修の単価の違い

新築工事は、資材をまとめて発注しやすく、職人も何もない場所で効率よく作業を進められます。

改修工事は、必要な資材を少量ずつ用意することが多く、資材の単価が割高になりがちです。「既存の壁を傷めないように」「配管を傷つけないように」といった、慎重で細やかな作業も求められます。

改修では、壁の向こうに構造の主要な部分が隠れていることがあります。それを傷つけないよう、重機ではなく手作業で慎重に解体する場合があり、その手間が見積もりに入ります。

見積もりの見方と、予備費

見積もりでは、解体・仮設・養生が項目として入っているか、診療を続けながらの工事に必要な費用が見込まれているかを確かめます。

改修では、壁や床を開けてみて分かる部分があるため、予備費は総額の5%ほどを目安に見込みます。ただし案件によって変わります。

面積変更と用途変更

増築する広さと確認申請の関係

防火地域・準防火地域の外で、増築する部分の床面積が合計10㎡以内であれば、確認申請が不要になる場合があります。防火地域・準防火地域の中では、10㎡以内の増築でも確認申請が必要です。ただし、確認申請が要らない場合でも、増築した部分と建物全体が建築基準法などに合っている必要があることに変わりはありません。建物の規模や地域、敷地の条件によって扱いが変わるため、増築を考え始めた段階で建築士にご相談ください。

診療所への用途変更

入院用ベッドのない診療所は、建築基準法で用途変更の確認申請が必要な用途(別表第一)に含まれないため、店舗などからの用途変更では確認申請が不要になる場合があります。ただし、建築基準法・消防法・保健所の基準に合わせる必要はあります。計画の前に、用途と規模を確かめます。

図面を確認するイラスト

消防設備は、増築のときに見直しが要ることがあります

消防法では、建物の用途や面積に応じて、設置する消防設備(消火器、自動火災報知設備、スプリンクラーなど)が定められています。増築によって、自動火災報知設備などが必要になることもあります。

これらの設備は、設置費用も維持費もかかります。また、増築する場所によっては、避難経路の確保や防火扉の設置が必要になることもあり、建築基準法と消防法の両方の条件を合わせて考えます。

歯科や内科などの入院用ベッドのない診療所は、消防法では「特定防火対象物」に分類されます(消防法施行令 別表第一(6)項イ)。特定防火対象物は、建てたときの基準のままでよいという扱いがなく、増築や用途変更をすると建物全体に今の基準が求められます。たとえば延べ面積が300㎡以上になると、自動火災報知設備が必要になる場合があります。必要な設備は面積や階数、建物の形によって変わるため、計画の早い段階で所轄の消防署と確認しながら進めます。

建築と消防の条件を、同じ時期に確かめる

増築の計画の初期に、建築と消防の両方の条件を洗い出します。

増築した部分だけでなく、既存の建物全体が消防の基準を満たしているかも、あわせて確かめます。増築は、建物全体の法規を見直す機会にもなります。

「現場目線」で考えるクリニック増築・改修

毎日使う人にしか見えない、使い勝手の視点

医院の開業や増築では、まず銀行や医療機器メーカーに相談される先生が多いと思います。銀行は資金の、医療機器メーカーは機器の専門家です。建物の使い勝手は、建築の側から確かめます。

動線、収納の高さ、スタッフの休憩場所など、毎日医院で働く先生やスタッフの目線を、間取りに落とし込みます。

「現場発想」の間取り設計

クリニックアーキテクトプロ(ハゼモト建設)では、図面どおりの建物をつくることにとどまらず、先生が目指す診療を行える空間を、間取りから考えます。

北九州市・下関市・福岡市での計画

この地域の気候(台風)、地盤、行政の建築規制を踏まえて、計画を組み立てます。不具合には、診療を止めないことを第一に、休診日や診療時間外にも対応します。顔の見える関係で、医院と長くお付き合いしていきたいと考えています。

まとめ

増築・改修は「準備」と「建築士との相談」で進めやすくなります

今回は、増築・改修の前に確かめておきたい7つのことをお話ししました。書類の有無、過去の増築の届出、診療を続けながらの工事、工期、費用、確認申請と消防、そして使い勝手の視点です。

増築や改修の計画の前に、建物の書類や状態を一緒に確かめたいときは、いつでもご相談ください。企画設計・プランニング・概算見積(たたき2案)までは無料で承っています。

医院づくり全体の流れはクリニック建築の進め方に、よくあるご質問はよくある質問のページにまとめています。ご相談は無料相談のページからお受けしています。

院長先生と建築会社の打合せのイラスト

クリニックアーキテクトプロ(ハゼモト建設)は、先生方の医院づくりを、建築の側から支えます。