この記事の結論:クリニックの新築・改修は、土地や物件を決める前の段階から、建築会社・医療機器メーカー・先生の三者で話を始めると、手戻りと追加費用を小さくできます。北九州市・下関市・福岡市近郊では、坂地の造成、沿岸部の塩害、車での通いやすさが建物の計画を大きく左右します。この記事では、私たちが医院の現場で確かめてきた順番どおりに、土地選びから開院後の改修までをまとめました。
執筆・監修:櫨本 健一(ハゼモト建設 代表取締役/一級建築士)
こんにちは。ハゼモト建設の代表を務めております、櫨本健一です。私たちは「クリニックアーキテクトプロ」として、北九州市を拠点に、下関市から福岡市近郊まで、歯科・整形外科・内科などの医院づくりをお手伝いしています。
これまで、このサイトでは「総合ガイド」を何本かに分けてお届けしてきました。今回、それらを1本にまとめ直し、現場で確かめた中身だけを残しました。最初から順に読んでいただいても、気になる章だけ拾っていただいても構いません。
目次
- 1. 土地・物件は「建築会社と一緒に」見る
- 2. 新築か、テナント・居抜きの改修か
- 3. 2025年4月の法改正と「平屋・200㎡以下」という考え方
- 4. 法規の要所:採光・換気・排煙と、防火・消防
- 5. 先生・医療機器メーカー・建築会社の「三者連携」
- 6. 床下の配管とLAN:見えなくなる設備ほど先に決める
- 7. 動線:患者さんとスタッフの通り道を分ける
- 8. 待合室と診察室:居心地は豪華さより「音・視線・温度」
- 9. 断熱・気密と木造:毎日の空調と長い目で見た建物
- 10. 資金計画:建物本体ではなく「開院までの総額」で考える
- 11. 診療を続けながらの改修
- 12. 施工事例と院長先生の声
- 13. まとめ:私たちの伴走の仕方
- よくある質問
1. 土地・物件は「建築会社と一緒に」見る
土地や物件は、契約する前に建築会社と一緒に現地を見ていただくのが一番の近道です。土地の値段だけでは、造成・地盤・給排水の引き込みにかかる費用が見えないからです。建築の目で現地を見れば、その場で「この土地なら、建物のほかにこういう工事が要りそうです」とお伝えできます。
北九州・下関は「坂」と「海」、福岡市近郊は「敷地の広さ」
北九州市は起伏が大きく、少し場所が違うだけで地盤の性質が変わります。高低差のある土地では、擁壁(ようへき:土が崩れないように支える壁)や土留めの工事が建物とは別に必要になることがあり、その費用は土地によって大きく変わります。地盤調査(建物を支える力がどれだけあるかを測る調査)の結果しだいで、基礎の工事も変わります。
下関や門司、若松などの沿岸部では、潮風による塩害を見込んで、空調の室外機や金属の部材に耐塩仕様のものを選びます。最初に少し手をかけておくと、設備が長持ちします。
福岡市近郊は地価が高く、限られた敷地で建ぺい率・容積率(敷地に対して建てられる広さの上限)を守りながら、駐車場をどう取るかが計画の中心になります。
車で来る患者さんの目で敷地を見る
北九州・下関は車で通う方が多い地域です。駐車場の入れやすさ、切り返しのしやすさ、駐車場から玄関までのスロープの勾配(傾きのきつさ)は、ご高齢の方や小さなお子さま連れの方の通いやすさにそのままつながります。雨の日を考えて、車寄せに深い軒(のき)を出すかどうかも、敷地の段階で一緒に考えます。
「この土地、どう思いますか」という段階でお声がけいただければ、建てる側の目で見た気づきをお伝えします。候補の土地や物件がある先生は、物件リクエストからお知らせください。
2. 新築か、テナント・居抜きの改修か
新築とテナント(ビルの一室)・居抜き(前の店舗の内装を活かす形)の改修は、初期費用だけで比べず、電気・排水・床の高さといった「建物の下地」が医院に合うかで比べるのが確かです。下地が合わない物件では、改修費が想定より大きくなることがあります。物件を契約する前に、建築会社に下地の確認を頼んでいただくのがおすすめです。
| 比べる点 | 新築 | テナント・居抜きの改修 |
|---|---|---|
| 間取りの自由度 | 高い。動線から組み立てられる | 既存の柱・窓・設備の位置に左右される |
| 電気・排水 | 医院に合わせて計画できる | 容量や配管の太さが足りるか確認が要る |
| 工期 | 設計・申請・建築で長め | 短くできることが多い |
| 費用の読みやすさ | 土地の条件が分かれば読みやすい | 開けてみて分かる部分が残る |
工期の目安は、テナント内装が着工から10週間ほど(2か月半〜3か月)、木造平屋の新築が着工から3か月ほどです。新築は確認申請などの準備に1〜2か月かかるので、開院までは約6か月を見ておいてください。
契約前に「下地の確認」をする
- 電気の容量:レントゲンや空調をまとめて動かせるだけの容量があるか。
- 床下の高さ:配管を通すために床を上げられる高さがあるか。床を上げても天井が低くなりすぎないか。
- 古い建物の対応:アスベスト(古い建材に使われた繊維)の調査や耐震の対応が要るか。
- 用途変更の手続き:入院用ベッドのない診療所は、建築基準法で用途変更の確認申請(工事の前に役所や審査機関の確認を受ける手続き)が必要な用途に含まれないため、店舗などからの用途変更では確認申請が不要になる場合があります。ただし、建築基準法・消防法・保健所の基準に合わせる必要はあります。なお、歯科や内科などの入院用ベッドのない診療所も、消防法では「特定防火対象物」に分類され、改修や用途変更をすると建物全体に今の基準が求められます。
元コンビニの建物を医院にするとき
元コンビニの建物は、床がコンクリートの土間で、歯科ユニットなどの排水を通す余地がありません。私たちは土間をはつらず(削り取らず)、床を250〜300mm上げて配管の通り道をつくります。床の高さは、排水に必要な勾配から決めます。床が上がる分、入口はスロープで段差をなくします。土間を壊さない分、工期と騒音を抑えられます。
B工事・C工事の範囲を先に確かめる
ビルのテナントでは、工事が「誰が費用を持ち、誰が業者を選ぶか」で分かれています。
| 区分 | 費用を持つ人 | 業者を選ぶ人 | 主な中身 |
|---|---|---|---|
| A工事 | ビルのオーナー | オーナー | 建物の構造や共用部分 |
| B工事 | 先生(借りる側) | オーナーの指定業者 | ビル全体の空調・防災設備につながる部分 |
| C工事 | 先生(借りる側) | 先生 | 内装・医院の中の設備 |
B工事は指定業者が見積もるため、先生が金額を比べにくい工事です。契約の前に、どこまでがB工事なのかを書面で確かめ、C工事として先生が選べる範囲を広げられないか、オーナーさんと話し合う余地があります。私たちはその話し合いの材料づくりをお手伝いします。
3. 2025年4月の法改正と「平屋・200㎡以下」という考え方
2025年4月の建築基準法の改正で、木造の建物の確認申請のしかたが変わりました。平屋で延べ面積200㎡以下の建物は「新3号」という区分になり、それ以外の木造2階建てや200㎡を超える平屋は「新2号」として、構造(建物の骨組み)の審査が加わります。土地に余裕がある北九州・下関では、平屋で200㎡以下に収める計画は、検討の候補に入れる価値があります。
新2号と新3号の違い
| 区分 | 主な対象 | 確認申請で増えること |
|---|---|---|
| 新2号 | 木造2階建て、延べ200㎡を超える木造平屋 | 構造の図書の提出と審査。設計と申請に時間がかかる |
| 新3号 | 延べ200㎡以下の平屋 | これまでに近い審査で進められる |
新2号になる計画では、構造の設計と審査の分だけ、着工までの期間に余裕を見ておきます。つなぎ融資(建物が完成するまでの間の借入)の利息も、その期間に合わせて資金計画に入れます。
平屋をおすすめする理由
- 段差のない一つの階で完結する:エレベーターが要らず、その維持費もかかりません。車椅子やベビーカーの方も移動しやすくなります。
- 動線を短くまとめやすい:受付・診察・処置・消毒の部屋を同じ階に並べられます。
- 私たちの得意な形:ハゼモト建設は住宅でも平屋を主力にしてきました。木造平屋の医院として、よつば歯科クリニック下関(約200㎡)を2026年8月に竣工しています。
200㎡でどれだけの部屋が取れるかは、診療科目と診療のしかたで変わります。よつば歯科クリニック下関(約200㎡)では、歯科ユニットを5台置いています。
4. 法規の要所:採光・換気・排煙と、防火・消防
医院の設計で早めに決めておきたい法規は、採光・換気・排煙(LVS)と、防火の地域指定です。診察室を個室にするほど、窓や排煙の条件を満たすのが難しくなります。設計の最初の段階でこれらを整理しておくと、あとから大きな設備を足すことを避けられます。
LVS:採光・換気・排煙
- L(採光):人が継続して使う部屋(居室)には、一定の大きさの窓が要ります。
- V(換気):機械換気の設備が要ります。医院では感染症対策の面からも大事な設備です。
- S(排煙):火事のときに煙を外へ出すための窓や設備です。個室を並べると、外に面した窓が取れない部屋が出てきます。
排煙は、内装の仕上げと下地を燃えにくい材料にするなど、国の告示に沿った方法で緩和できる場合があります。どの方法を使うかで、天井の高さや費用が変わります。よく使うのは、平成12年建設省告示第1436号に沿った緩和です。私たちは設計の初めに「この部屋の排煙はこう処理します」と方針を決め、先生にご説明します。
準防火地域と「延焼のおそれのある部分」
市街地では、準防火地域(火が燃え広がりにくい建物にするよう定めた地域)に当たることがよくあります。隣地の境界線や道路の中心線から、1階は3m、2階は5m以内の外壁や窓は「延焼のおそれのある部分」となり、防火の性能をもつ窓や外壁が要ります。建物の置き場所を少し動かすだけで、防火仕様にする窓を減らせることがあるので、配置図の段階で一つひとつ線を引いて確かめます。
審査機関と消防の両方に、同時に相談する
確認申請を見る審査機関と、防火・避難を見る消防署は、それぞれの立場から指摘をくれます。両方の意見を別々に聞いていると、図面の直しが行ったり来たりします。私たちは計画の段階から両方に相談し、どちらの条件も満たす案を持っていくようにしています。ショッピングセンター(ゆめモール下関)の敷地内に建てたよつば歯科クリニック下関では、施設全体の消防計画との整合も確かめました。
5. 先生・医療機器メーカー・建築会社の「三者連携」
医院づくりは、先生・医療機器メーカー・建築会社の三者が、計画の初めから同じ図面を見て話すことで進みやすくなります。建物の設計が固まってから機器の話を始めると、配管・電源・床の補強をあとから変えることになり、追加の費用と工期がかかりやすいからです。私たちはこの三者の話し合いの場を、こちらから設けるようにしています。
三者それぞれの役割
| 立場 | 得意なこと | 建築会社が引き受けること |
|---|---|---|
| 金融機関 | 融資の組み方と返済計画 | 建物の計画と費用の根拠を、事業計画の資料として整える |
| 医療機器メーカー | 機器の性能と、機器を置くための条件 | 機器の条件を、配管・電源・床・壁の中に落とし込む |
| 建築会社 | 人が動く空間として全体を組み立てる | 三者の情報をまとめ、工事の順番に並べる |
それぞれに本来の役割があり、どれが欠けても医院はできません。建築会社の役目は、機器の条件とスタッフの動き、建物の法規を一つの図面の上で合わせることだと考えています。
メーカーの図面だけでは決まらないこと
メーカーさんの配置図は「機器が置けるか」を確かめるためのものです。その周りでスタッフがすれ違えるか、先生が振り返って器具を取るときに無理がないかは、建築側が人の動きとして確かめます。実際の現場でも、配置図どおりに機器の位置を決めたあと、壁の中や床下に這わせる配線・配管の長さを測ってみると、あと少し足りないということがありました。こうしたことを着工前に見つけるために、三者で図面を囲みます。
事前の打ち合わせで確かめる4つのこと
- 搬入の経路:大きな機器が入口・廊下・ドアを通れるか。テナントではエレベーターの大きさも確かめます。
- 床の強さ:CTなど重い機器を置く場所の床に、補強が要るか。新築なら梁(はり:床を支える横の骨組み)の位置で調整できます。
- 電源と通信:三相200V(業務用の動力電源)が要る機器はどれか。コンセントの形と位置、LANの規格はどうか。
- 給排水・エア・バキューム:歯科ユニットなど水や圧縮空気を使う機器の接続位置。床を張る前に配管を決めます。
レントゲン室やCT室を設ける場合は、放射線を遮る工事が要ります。機器の条件をもとに遮へいの計算をし、鉛の板を壁・床・天井に隙間なく施工します。
先生にご準備いただきたいこと
- 入れる予定の医療機器の一覧(どの部屋に何を置きたいか、大まかで構いません)
- 医療機器メーカーの窓口となるご担当者
- 三者の打ち合わせに出ていただける日程
浜田クリニックでは、CTを置く位置に合わせて、梁の配置から床を補強しました。重い機器ほど、置き場所を設計の初めに決めておくことが大切です。
6. 床下の配管とLAN:見えなくなる設備ほど先に決める
床下の配管と壁の中の配線は、仕上げてしまうと見えなくなり、あとから直すには床や壁を開けることになります。だから私たちは、床や壁を閉じる前に、関係する業者全員でその場を見て確かめます。開院後の使い勝手と、10年先の機器の入れ替えを見込んで決めておく場所です。
床下の高さと排水の勾配
歯科ユニットの排水は、勾配(流れるための傾き)がきちんと取れていることが大切です。勾配が足りないと詰まりやすくなるので、床下の高さは排水の勾配から逆算して決めます。詰まったときに掃除できるよう、掃除口の位置も現場で一つずつ決めます。床下を高くするとスロープが長くなるので、敷地の中に収まるかもあわせて確かめます。将来の機器の入れ替えに備えて、床に点検口を設けたり、空の配管を先に入れておいたりもします。
着工前の「設備の情報共有会」
よつば歯科クリニック下関(木造平屋・約200㎡)の新築では、電気・水道の業者、電子カルテやレセコン(診療報酬の請求に使うコンピューター)を担当するIT業者、医療機器メーカーが現場に集まり、図面を見ながら位置を指差しで確かめる会を開きました。
- 給排水:ユニットごとの排水の流れと掃除口の位置。
- 電気・LAN:電子カルテのサーバーの置き場所、停電に備えた予備の電源、患者さん用Wi-Fiの電波の届き方。
- 通信の将来:より速い回線が必要になったときに、ケーブルを通し替えられる配管になっているか。ケーブルを急なカーブで曲げていないか。
図面があっても、現物を前にすると業者同士の意見が食い違うことがあります。その食い違いを工事の途中ではなく、壁を閉じる前に出し切るのがこの会の目的です。
LANは少し余裕をもって
いまの医院は、電子カルテ、画像の管理、予約、オンライン資格確認(マイナ保険証の確認)など、ネットワークがないと一日が回りません。LANケーブルは通信の速さに合わせた規格を選び、診察室やユニットごとに予備の口と空の配管を用意しておきます。モニターの位置も、先生と患者さんが自然に同じ画面を見られる高さと角度で、配線とあわせて決めます。
7. 動線:患者さんとスタッフの通り道を分ける
医院の動線は、患者さんの通り道とスタッフの通り道を分けて考えると、どちらにとっても動きやすくなります。患者さんは迷わず、スタッフはすれ違いの気づかいが減り、器具の流れも清潔に保ちやすくなります。図面の上でスタッフの一日の動きを線で描き、線が何度も交わる場所を見つけて直します。
完全な動線分離の例
よつば歯科クリニック(門司院・下関)では、患者さんはガラス沿いの廊下を通り、スタッフは診療室の裏の廊下を通るように分けました。スタッフは患者さんの前を横切らずに、消毒室や器具の置き場へ行き来できます。
スタッフが働きやすい裏側
- 回れる間取り:受付・診察室・処置室・消毒室を、行き止まりなく回れるようにつなぎ、歩く距離を減らします。
- 汚れたものと清潔なものの通り道を分ける:使った器具が消毒・滅菌を経て戻る道筋を一方向にします。
- スタッフ専用のトイレと休憩室:短い休憩でも体を休められる場所を、できれば明るい位置に。
- 収納の高さ:踏み台を使わずに届く範囲に、よく使う物を置けるようにします。
診療科目ごとに気をつけること
- 歯科:水・空気・電気の配管が集中します。ユニットの間の通路幅と、消毒室への近さを優先します。CT室や技工スペースの位置も早めに決めます。
- 整形外科:車椅子で回れる直径150cmほどの空きを、待合室と通路に確保します。待合室に椅子・植栽・受付カウンターを置いたあとの寸法で確かめます。リハビリ室は将来の機器を見込んでコンセントを多めにし、重い機器の床の補強も検討します。
- 内科:発熱などの症状がある方が、一般の待合室を通らずに診察を受けられる別の入口と通路を検討します。換気の区切り方もあわせて決めます。
8. 待合室と診察室:居心地は豪華さより「音・視線・温度」
患者さんの居心地を左右するのは、仕上げの豪華さよりも、声が漏れないこと、視線がぶつからないこと、足元が冷えないことです。どれも設計の段階で決めておけば、大きな費用をかけずに整えられます。
- 音:診察室の声が待合室に届かないよう、壁の遮音と扉の位置を考えます。コンプレッサーなど音の出る機械は、診察室や待合室から離した機械室か、屋外の専用の囲いに置きます。
- 視線:受付で名前を呼ばれるとき、トイレの扉を開けたときに、待合室の方と目が合いにくい配置にします。
- 床:雨の日は濡れた靴で入ってこられます。床材はサンプルを濡らした状態で滑りにくさを確かめてから選びます。
- 温度:大きなガラス窓は開放的ですが、冬は足元が冷えやすくなります。窓の性能と床の暖かさをあわせて考えます。
受付カウンターの高さは、座っている患者さんと立っているスタッフの目線の差を見て決めます。目安は110cm前後です。
9. 断熱・気密と木造:毎日の空調と長い目で見た建物
医院は朝から夕方まで空調を使い続ける建物なので、断熱(外の暑さ寒さを伝えにくくすること)と気密(すき間を少なくすること)の性能は、毎日の光熱費と室内の快適さに直結します。性能を上げた分、初めの費用は増えますが、長く使う建物ほど差が積み重なります。
住宅で守っている性能を、医院でも
ハゼモト建設は、断熱等級6・7(国の省エネ基準より高い断熱の等級)の高性能住宅を建ててきました。そこで培った断熱と気密の施工を、医院にも費用に見合う形でお届けします。医院では等級や数値をお約束するものではありませんが、住宅と同じ自社の大工が施工するので、同じ品質、同じ考え方の建物になります。
- 窓:樹脂サッシと複層ガラスなど、窓際が冷えにくい窓を選びます。
- 換気:熱交換換気(換気しながら室内の温度を逃がしにくい換気)を使えば、換気の量を確保しながら空調の負担を抑えられます。
- 太陽光発電:医院は昼間に電気を使うので、太陽光発電と使う時間帯が重なります。
服を脱いで診察を受ける科目では、部屋ごとの温度のむらが少ないことも大切です。
木造の医院という選択
木造は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて建築費を抑えやすく、法定耐用年数(税務上の減価償却の年数)が短いという特徴があります。減価償却の扱いは先生ごとの事情で変わるので、税理士さんとあわせてご判断ください。音については、遮音シートや石膏ボードの重ね張りで対策します。浮いた資金を、開院から年数がたったときの改修に回すという考え方もあります。
10. 資金計画:建物本体ではなく「開院までの総額」で考える
資金計画は、建物本体の価格ではなく、最初の患者さんを迎える日までに要る費用をすべて並べた「総額」で組みます。坪単価には含まれない費用が多いからです。そのうえで、借りられる額ではなく、無理なく返せて建物が長持ちする額を目安にします。
坪単価に含まれないことが多いもの
- 外構(駐車場の舗装・植栽)、看板(サイン工事)
- 照明器具、カーテン・ブラインド、受付などの造作家具
- 電話・LANの配線、防犯カメラ
- 医療廃棄物の保管庫
- 設計料・申請の手数料、地盤改良
看板は、道路にはみ出して足場を組むなら道路占用許可、作業車を道路に停めるなら道路使用許可(警察署)が要ることがあります。申請に日数がかかるので、計画の初めから予定に入れます。
予備費と、お金をかける場所の見極め
地盤改良のように掘ってみないと決まらない費用や、資材の値動きに備えて、予備費をあらかじめ見込みます。目安は総額の5%ほどですが、案件によって違います。
それ以上に大切なのは、追加の変更そのものを出さないことです。電気や給排水は、工事がある程度進むと変更が難しくなります。だから私たちは、着工前に先生や医療機器メーカーと入念に打ち合わせをします。さらに、新築なら上棟(骨組みが立ち上がること)のあと、改装でも壁や天井のボードを張る前に、コンセントの位置や器具の高さをオーナー様に現場で確かめていただきます。直したいところはその場で直し、OKをいただいてからボードを張って仕上げに進みます。
お金をかける場所と抑える場所を分けることも大切です。換気・消毒室・動線のように医院の働きを決める部分には手をかけ、スタッフ用の仕上げなどは機能を保ちながら抑えます。同じ働きで、より手の届く材料を提案するのも建築会社の仕事だと考えています。
金融機関との打ち合わせには、建物の計画と費用の根拠をご説明するために同席することもできます。費用の目安は、テナント内装で坪100万円前後、木造平屋の新築で坪110万〜120万円程度です(税別・医療機器を除く)。敷地や物件の条件を伺えば、翌日に概算の幅をお示しします。
11. 診療を続けながらの改修
開院中の医院の改修は、工事の場所と時間を区切れば、診療を続けながら進められることが多くあります。休診の日数をできるだけ少なくするには、工程表を先生・スタッフの方と共有し、「いつまでに、どこまで終えるか」を一緒に決めておくことが要になります。
- 区切って進める:待合室、診察室というように場所を分け、使っていない区画から順に工事します。
- 音の出る作業は時間外に:解体など音や振動が出る作業は、休診日や診療後に行い、翌朝までに清掃して引き渡します。
- 工場で済ませられる加工は先に:現場での作業時間を減らします。
- ほこりと臭いを止める:工事区画を仮の壁でしっかり囲います。
福岡市のよつば歯科クリニック姪浜院では、休診日の木曜・日曜と夜間を使い、4日間に分けて区画ごとに部分改修を行いました。
古い建物を大きく改修する場合は、建てた当時の法律では問題なかったものが今の基準に合っていない「既存不適格」の部分を、あわせて直すことがあります。どこまで直すかは、改修の規模によって変わるので、現地を見てご説明します。八幡西区のかわかみデンタルクリニックでは、築25年の建物を居抜きで改修しました。
12. 施工事例と院長先生の声
私たちがこれまでに手がけた医院は、新築・増築・全面改修・テナント内装と、形がさまざまです。それぞれの条件の中で、動線と設備をどう収めたかを施工事例のページでご覧いただけます。
- よつば歯科クリニック門司院(新築)
- よつば歯科クリニック下関(ゆめモール下関・木造平屋の新築・約200㎡・2026年8月竣工)
- 小倉あんざい歯科・歯周病クリニック(小倉北区・ビルのテナント内装・約118㎡・2026年4月竣工)
- かわかみデンタルクリニック(八幡西区・築25年の建物を居抜きで改修)
- よつば歯科クリニック姪浜院(福岡市・診療を続けながらの部分改修)
- わたなべ整形外科クリニック(増築)
- CieR Clinic Kurosaki(元産婦人科の建物を全面改修)
- アトールクリニック(テナント内装)
- たんぽぽ歯科、石橋歯科、芳賀歯科、周田医院
各医院の写真と工事の中身は、施工事例のページにまとめています。
院長先生の声
理由はいくつかありますが、“費用”と“実績”そして“担当者”で決めました。(中略)5社ほど見積りを取りました。その中で、実績があり自身のイメージに近く「コストダウン出来る提案」をいただけたこと。親身にご提案してくださる担当者様のお人柄を見て選択しました。(中略)今回はそういったトラブルがなかったのが本当に良かったです。そして、本当に仕上がりがきれいです。当院のスタッフも大変満足しております。
よつば歯科クリニック門司院 院長(施工事例のページより)
13. まとめ:私たちの伴走の仕方
クリニックの建物は、開院の日がゴールではなく、そこから何十年と続く診療の場所です。だから私たちは、土地や物件を決める前から話を伺い、医療機器メーカーや金融機関と同じ図面を囲み、見えなくなる配管や配線は閉じる前に全員で確かめ、開院後の改修までお付き合いします。
ハゼモト建設は昭和40年に北九州市で創業し、設計から施工までを一つの会社で行っています。大工・基礎・建て方は自社の職人が施工します。設計の考えが現場まで途切れずに届くことが、医院づくりでも私たちの土台です。
- まだ土地は決まっていないが、開業の構想がある
- いまの医院を、患者さんやスタッフにとって使いやすくしたい
- 医療機器メーカーの配置案を、建物の側から見てほしい
よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。どの段階からでもご相談をお受けしています。よければ無料相談からお声がけください。
よくある質問
Q. 土地や物件が決まっていなくても相談できますか。
A. はい、できます。土地や物件を決める前にご相談いただくほうが、造成や改修にかかる工事を含めて比べられます。候補がある場合は、現地を一緒に見に行きます。
Q. 新築とテナント改修は、どちらがよいですか。
A. 敷地の条件と、診療科目に要る設備で変わります。テナントは工期を短くしやすい一方、電気の容量や排水、B工事の範囲で費用が変わります。契約前に建物の下地を確かめたうえで比べるのがおすすめです。
Q. 診療を続けながら改修できますか。
A. 工事の区画と時間を分ければ、診療を続けながら進められることが多くあります。音の出る作業は休診日や診療後に行い、工程表を先生・スタッフの方と共有して進めます。
Q. 医療機器メーカーとの打ち合わせにも出てもらえますか。
A. はい。設計の初めから、先生・メーカー・私たちの三者で打ち合わせる場を設けています。搬入経路、床の補強、電源、配管の位置を、床や壁を仕上げる前にすり合わせます。
Q. 費用の目安はどのくらいですか。
A. 目安は、テナント内装で坪100万円前後、木造平屋の新築で坪110万〜120万円程度です(税別・医療機器を除く)。敷地や物件の条件、診療科目、機器によって変わるため、条件を伺ってから概算をお示しします。建物本体だけでなく、外構・看板・家具・申請費用まで含めた開院までの総額でご説明します。