この記事の結論:診療を続けながら工事をする「居ながら改装」は、工事を区画に分け、休診日(木曜・日曜・連休)と診療後の時間に作業を集めることで進められます。音・粉塵・臭いの対策と、翌朝の診療前の清掃・引き渡しまでを工程に組み込むことが大切です。工程表を院内で共有し、患者さんにも早めに案内しておくと、診療への影響を小さくできます。

執筆・監修:櫨本 健一(ハゼモト建設 代表取締役/一級建築士)

「居ながら改装工事」とは?

居ながら改装工事とは、医院を閉めずに、診療を続けながら一部ずつ改装していく工事の進め方です。

長期の休診は、患者さんの通院や医院の収入に影響します。そこで、工事をいくつかの区画に分け、休診日や診療時間外に作業を進め、翌朝には診療できる状態に戻します。クリニック アーキテクト プロでは、不具合への対応でも診療を止めないことを第一に、休診日や診療時間外に対応しています。改装でもその考え方は同じです。

増築・改修全般で事前に確かめたいことは「増築・改修の前に確かめたい7つのこと」にまとめています。この記事では、診療を続けながら工事を進める段取りに絞って紹介します。

休診日の使い方で工事の方法を選ぶ

工事の量と休診日の長さによって、「休診日・夜間に分ける」か「連休にまとめる」かを選びます。

比べる点休診日(木・日)と夜間に分ける連休(お盆・年末年始など)にまとめる
向いている工事区画ごとに分けられる部分改修床・壁・天井の張り替えなど医院全体に及ぶ工事
休診の必要ほぼなし(通常の休診日を使う)連休をそのまま工事期間にする
毎回の片付け作業のたびに清掃・養生の撤去が必要最終日にまとめて清掃・引き渡し
工程の組み方1日で区切れる作業単位に分ける工程を連続で組め、乾燥待ちのある作業も入れやすい
注意点工事期間が数週間にわたることがある日程に余裕が少なく、資材の手配を早めに済ませる必要がある

区画分け:診療に使う部屋を残しながら工事する

最初に決めるのは、どの区画をどの順番で工事するかです。

待合、受付、診療室、スタッフ室、トイレなどを区画に分け、工事中の区画があっても診療が回るように順番を組みます。たとえば診療室が複数あるなら1室ずつ、受付まわりは休診日の1日で終わる範囲にとどめる、といった考え方です。電気や水道を止める必要がある工事は、ほかの区画への影響も見て日を決めます。

あわせて、改修する区画に「既存不適格」(建てた当時は適法だったが、今の基準には合わない部分)がある場合は、あわせて直すことがあります。用途や規模によっては消防設備の基準も関わるため、所轄の役所・消防署と確かめます。

工程表を院内で共有する

工程表は、先生だけでなくスタッフ全員が見られる形で共有します。

「何日の何時から、どの部屋が使えないか」「翌朝までに戻るか」が分かれば、予約の調整や器具の移動を前もって準備できます。工程表には、作業日・時間帯、工事する区画、音の出る作業の有無、翌朝の引き渡し時刻を書き込みます。変更があればすぐに知らせる連絡方法も決めておきます。

工場で加工できる造作家具やカウンターは先に製作しておき、現場では取り付けるだけにすると、1回の作業時間を短くできます。

音の出る作業は休診日・診療後に集める

解体や穴あけなど音や振動の出る作業は、休診日か診療後に集めます。

診療中にできるのは、音の小さい作業か、診療区画から離れた場所での作業に限るのが基本です。テナントビルの場合は、ほかのテナントや住居への配慮から作業できる時間帯が決まっていることがあるため、管理会社に事前に確かめます。夜間作業の可否や搬入口の使い方もあわせて確認します。

粉塵・臭い対策:仮の壁で区切る

工事区画は仮の壁で区切り、粉塵と臭いが診療区画へ流れないようにします。

仮の壁(工事中だけ立てる間仕切り)は、床から天井まですき間なくふさぐのが基本です。空調や換気の吹き出し口・吸い込み口を通じて粉塵が回ることがあるため、工事区画の空調の止め方や、換気の向きも確かめます。接着剤や塗料は臭いの少ない材料を選び、乾燥の時間を工程に入れます。器具や医療機器は移動するか、養生(シートで覆って保護すること)をします。

翌朝の清掃と引き渡し

居ながら改装では、作業が終わった日の翌朝、診療前に「いつも通り使える状態」で引き渡すことがいちばん大切です。

作業後は、工事区画だけでなく通路や待合も含めて清掃し、養生を外し、照明・コンセント・水まわりが使えるかを確かめます。診療室の場合は、先生やスタッフに器具の配置や使い勝手を確かめていただきます。引き渡しの時刻と確認する人を、工程表にあらかじめ書いておくと安心です。

患者さんへの案内

工事の時期と内容は、院内掲示やホームページなどで早めに案内します。

「工事期間中も通常通り診療します」「一部の部屋が使えない日があります」といった内容を、工事の前から伝えておくと、患者さんも安心です。入口や通路が変わる日は、当日の案内表示も用意します。案内の文面や掲示の時期も、工程表とあわせて先生と相談して決めます。

事例:休診日・夜間と連休、それぞれの進め方

よつば歯科クリニック 姪浜院(福岡市)

休診日の木曜・日曜と夜間を使い、4日間に分けて区画ごとに部分改修しました。診療を続けながら、1回ごとに区切れる工事の単位に分けて進めた事例です。

かわかみデンタルクリニック(八幡西区)

かわかみデンタルクリニックでは、お盆休みの10日間で工事を完了しました。床・壁・天井の張り替え、受付カウンターとカルテ棚の新設、出入口を開き戸から自動ドアへ、スタッフトイレを和式から洋式へ、棚の造作などを行い、スタッフの方から「使い勝手が良くなった」との声をいただきました。

よくある質問

Q. 診療を続けながら改装すると工事費は高くなりますか?

A. 作業を分ける回数や夜間作業の有無、毎回の清掃・養生によって費用が変わる場合があります。金額は工事内容によるため、見積りで内訳を確かめてください。

Q. 歯科ユニットの入れ替えも休診日だけでできますか?

A. 配管や床の工事の量によります。ユニットごとの給排水・エアー・電気の配管やバキュームの工事が必要になるため、医療機器メーカーと日程を合わせて、休診日や連休に組めるか検討します。

Q. 工事中に不具合が起きたらどうなりますか?

A. 診療を止めないことを第一に、休診日や診療時間外にも対応します。翌朝の引き渡し前に確認を行い、気になる点はすぐにお知らせください。

まとめ

居ながら改装工事は、区画分け、工程表の共有、音の出る作業の時間帯、粉塵・臭い対策、翌朝の清掃と引き渡し、患者さんへの案内を、着工前に段取りしておくことで進められます。北九州市・下関市・福岡市で、診療を止めずに改装したい医院は、休診日の予定が決まる前に相談いただくと、工程を組みやすくなります。

クリニック アーキテクト プロでは、企画設計・プランニング・概算見積(たたき2案)までを無料で承っています。休診日を使った改装のご相談は、無料相談からお気軽にお問い合わせください。