この記事の結論:クリニック内装の追加費用は、解体してから分かる配管・電気・床の状態や、B工事、看板・外構、仕様や医療機器の条件変更から出やすくなります。着工前の調査と見積書の内訳確認で多くは予防でき、それでも予算を超えるときは、VE(同じ働きを保ちながら費用を下げる見直し)で場所ごとにメリハリをつけて調整します。換気・消毒室・動線・床下配管は削らないのが基本です。

執筆・監修:櫨本 健一(ハゼモト建設 代表取締役/一級建築士)

追加費用が出やすい項目は、ほぼ決まっています

追加費用が出やすい項目は、「見えない部分」「別の会社が決める部分」「あとから変わる部分」の3つに分けられます。下の表に、主な項目と予防策をまとめました。

追加が出やすい項目追加になる理由予防策
解体後に分かる配管の状態既存の排水管の位置や傷みが図面と違う現地調査で点検口から確かめ、予備費を見ておく
電気容量分電盤の空きや契約電力、三相200V(動力)が足りない医療機器の設置仕様書を早めに集め、電気業者と照らし合わせる
床の状態床下の高さが足りない、下地が傷んでいる配管ルートと排水勾配(水が流れるための傾き)から床の高さを先に決める
B工事ビル側の指定業者が行い、内容と金額を比べにくい物件を決める前に工事区分表を取り寄せ、範囲を確かめる
地盤改良新築では地盤調査の結果で要否が決まる調査結果が出るまでは別枠で予算をとっておく
看板・外構坪単価や内装の見積もりに含まれないことが多い最初の資金計画から別項目として入れる
仕様変更打ち合わせが進むにつれて仕上げや設備のグレードが上がる変更のたびに増減額を書面で確かめる
医療機器の条件変更機種が変わり、配管・電源・床の補強の条件が変わる機種を早めに決め、メーカーを着工前の打ち合わせに呼ぶ

「一式」表記の内訳をたずねるのが第一歩です

見積書の「一式」表記は、何が入っていて何が入っていないかが分かりにくく、あとから追加になりやすい書き方です。電気はメーカー・型番・数量・単価、空調は仕様と配管ルート、給排水は材質と経路、内装はグレードと面積、建具は種類と数をたずねると、比べやすくなります。見積書の読み方は建築費・内装費の決まり方でも紹介しています。

着工前の「設備の情報共有会」で条件変更を減らします

医療機器やITの条件変更による追加は、着工前に関係者がそろって位置を決めることで減らせます。クリニックアーキテクトプロでは、電気・水道業者、電子カルテ・レセコンのIT業者、医療機器メーカーが現場に集まる「設備の情報共有会」を開き、先生・医療機器メーカー・建築会社の三者で配管とLANの位置を確かめます。予備費は総額の5%ほどを目安に見ておくと、解体後に分かることにも落ち着いて対応できます。

VEは「働きを保ったまま」費用を下げる見直しです

VE(バリューエンジニアリング)とは、その部屋や部材が果たす働きを保ったまま、つくり方や材料を見直して費用を下げる考え方です。単に仕上げを安いものに替える「削り」とは違い、患者さんとスタッフにとっての使いやすさを落とさないことが前提です。

VEの具体例

見直しの方法具体例気をつけること
場所ごとのグレードのメリハリ受付・待合など患者さんの目に触れる場所は仕上げを上げ、スタッフ室や倉庫は標準の仕上げにする医院の印象をつくる場所を先に決める
形をシンプルに曲面の壁や細かな段差を減らし、天井の高さをそろえる間接照明など、効果の大きい演出は残す
造作家具の見直し収納棚の一部を既製品に替える、扉の数を減らす受付カウンターの高さ(目安110cm前後)や配線の通り道は確保する
既存の再利用居抜き物件で、使える建具・設備・下地を残す古い設備の寿命と、今の基準に合うかを確かめる
標準品の採用照明器具・水栓・建具を特注から標準品に替える清掃のしやすさや交換部品の手に入りやすさも比べる

北九州市門司区のよつば歯科クリニック 門司院では、院長が5社ほどの相見積りを取り、「費用・実績・担当者」で比べて当社を選んでくださいました。評価いただいた点の一つが、コストダウンできる提案でした。門司院は自由診療に合わせて「清潔感」と「高級感」の色づかいを大切にした医院で、トラブルがなかったこと、仕上がりがきれいなことも評価いただいています。

してはいけない削り方があります

換気・消毒室・動線・床下配管の4つは、費用を下げるために削らないのが基本です。これらはあとから直そうとすると、壁や床を壊すことになり、最初に整えるより費用も休診日数もかかりやすいためです。

  • 換気・空調:感染対策や患者さんの快適さにかかわります。機器のグレードは調整できても、必要な換気の量や区切り方は保ちます。
  • 消毒室:器具の洗浄・滅菌の流れが詰まると、毎日の診療の効率が落ちます。広さと配置は先に確保します。
  • 動線:患者さんとスタッフの通り道を分ける計画は、医院の使い勝手を長く左右します。門司院でも、患者さんとスタッフの通り道を分けています。
  • 床下配管:勾配が取れないと詰まりやすくなります。将来の入れ替えに備えた点検口や空配管(あとで配管を通すための空の管)も残しておきます。

テナントの改修で確かめたい点は内装費用の目安と進め方、元店舗の物件での床と配管の考え方は元コンビニ・店舗跡を歯科医院にでも紹介しています。

設計から施工まで一社で行うと、調整の手戻りが少なくなります

VEの効果を出しやすいのは、設計の段階から施工の費用を見ながら調整できる体制です。当社は設計から施工まで一社で一貫して行うため、図面と仕上がりの相違が少なく、窓口も一つです。北九州市・下関市・福岡市の医院でも、減額の案を出すときに「どこが変わって、何が変わらないか」を図面と見積書の両方で示すようにしています。

よくある質問

Q. クリニック内装で追加費用が出やすいのはどこですか?

A. 解体後に分かる配管・電気容量・床の状態、テナントのB工事、新築の地盤改良、看板・外構、仕様変更、医療機器の条件変更が出やすい項目です。着工前の調査と内訳の確認で、多くは予防できます。

Q. VEとはどういう意味ですか?

A. 同じ働きを保ちながら、つくり方や材料を見直して費用を下げる考え方です。場所ごとのグレードのメリハリ、形をシンプルにする、標準品を使うといった方法があります。

Q. 費用を下げるときに削ってはいけない部分はありますか?

A. 換気・消毒室・動線・床下配管は削らないのが基本です。あとから直すと壁や床を壊すことになり、費用も休診日数もかかりやすいためです。

まとめ

クリニック内装の追加費用は、見えない部分・別の会社が決める部分・あとから変わる部分から出やすく、着工前の調査、見積書の内訳確認、設備の情報共有会、予備費5%ほどの確保で備えられます。予算を超えたときは、場所ごとのメリハリ、シンプルな形、造作家具の見直し、既存の再利用、標準品の採用といったVEで調整し、換気・消毒室・動線・床下配管は守ることが大切です。

クリニックアーキテクトプロでは、企画設計・プランニング・概算見積(たたき2案)までは無料です。お手元の見積書の見方や減額の進め方も、一級建築士がご相談に応じます。お気軽に無料相談からご連絡ください。