この記事の結論:発熱外来は、発熱などの患者さんが一般の待合を通らずに診察を受けられるよう、入口・待合・トイレ・換気をできるだけ分けて計画します。全部を分けられない小規模なクリニックでも、入口の位置や扉、空気の流れを工夫すれば区切りはつくれます。細かな基準は、計画の早い段階で保健所に確かめながら進めます。
執筆・監修:櫨本 健一(ハゼモト建設 代表取締役/一級建築士)
発熱外来の動線分離とは
動線分離とは、発熱やせきのある患者さんと、それ以外の患者さんが、建物の中で同じ場所を通ったり同じ空間で待ったりしないように、通り道と部屋を分けることです。内科や小児科では、健診や慢性疾患の通院、予防接種の方と、発熱の方が同じ時間帯に来院します。とくに小児科では、乳幼児健診や予防接種で来たお子さんと、熱のあるお子さんが同じ待合にならないよう配慮したいところです。
動線を分けておくと、患者さんが安心して来院しやすくなるだけでなく、スタッフの案内や消毒の手間も整理しやすくなります。開業後に「やはり分けたい」となっても、入口や換気は後から変えにくいため、設計の最初に考えておくことが大切です。
分けたい3つの場所:入口・待合・トイレ
動線分離で優先したいのは、入口、待合、トイレの3つです。この3つが分かれていれば、発熱の患者さんが一般の患者さんとすれ違う場面を大きく減らせます。
別入口
発熱外来の入口は、正面の入口とは別の面に設けるのが基本です。駐車場から直接入れる位置にすると、車で待ってもらい、順番が来たら呼ぶという使い方もしやすくなります。入口の近くにインターホンや案内表示を付け、どこから入ればよいかが分かるようにします。看板・サインの計画もあわせて考えます。
別待合
発熱の患者さん用の待合は、一般の待合と壁と扉で区切ります。待合から診察室・処置室へ、一般の通路を通らずに行けると理想的です。広い待合を取れない場合は、個室の待機室を1〜2室つくる方法もあります。
別トイレ
トイレは見落としやすい部分です。一般のトイレを共用すると、発熱の患者さんが一般の待合を通ることになります。発熱外来の待合の近くに専用のトイレを置くか、少なくとも一般の待合を通らずに行ける位置にします。給排水の配管ルートに関わるため、早めに位置を決めます。
換気の区切り方(一般論)
換気は、発熱外来側の空気が一般の待合へ流れ込まないように区切ることが基本の考え方です。部屋ごとに給気と排気を分けて考え、発熱外来の待合や診察室の空気は、一般の待合を通らずに外へ出す経路にします。
一般的には、発熱外来側の排気を少し強めにして、空気が一般側から発熱側へ流れるようにする方法がとられます。排気口の位置は、外の人通りや隣の建物の窓、給気口から離します。ダクト(空気を運ぶ管)を通すための天井裏のスペースが必要になるため、天井の高さとあわせて計画します。
空調や換気の具体的な方式・能力は、建物の大きさや部屋の使い方で変わります。感染症に関する施設の基準や運用は、地域や時期によって求められることが変わる場合があるため、所轄の保健所に確かめながら決めます。
小規模なクリニックでもできる工夫
敷地や区画が小さく、入口・待合・トイレをすべて二つずつ取れない場合でも、区切りをつくる工夫はあります。
- 診察室の一つを、外から直接入れる「発熱外来用の診察室」にし、待合を通らずに診察できるようにする
- 小さな待機室(個室)を入口のそばに設け、扉で区切る
- 一般待合と発熱側の境目に扉を付け、普段は開けておき、必要なときに閉めて区切れるようにする
- 換気扇を発熱側の部屋に追加し、空気の流れを一方向にする
- 将来、間仕切りや換気扇を足せるよう、下地・電源・空配管(あとから線や管を通すための管)を先に用意しておく
時間帯で発熱外来と一般外来を分ける運用と組み合わせると、建物の負担を抑えながら区切りをつくれる場合があります。
新築と改修での違い(比較表)
新築は最初から入口や換気の経路を自由に決められ、改修は既存の建物の条件の中で工夫する、という違いがあります。主な違いを表にまとめました。
| 項目 | 新築 | 改修・テナント |
|---|---|---|
| 別入口 | 駐車場や道路との関係を見て、最初から位置を決められる | 外壁に開口を新しく設けられるか、構造やビル側の許可を確かめる |
| 別待合 | 間取りの段階で、一般待合と離して配置できる | 既存の部屋を区切る。壁を天井裏まで立ち上げられるか確かめる |
| 別トイレ | 給排水の経路を考えて自由に置ける | 既存の排水管の位置に左右される。床を上げて配管の通り道をつくることもある |
| 換気の区切り | ダクトの経路と天井裏のスペースを最初から確保できる | 天井裏の高さや既存ダクト、B工事(ビル全体の空調・防災につながる部分)との取り合いを確かめる |
| 確認する相手 | 審査機関・消防・保健所 | 上記に加えてビルのオーナー・管理会社 |
改修では、工事中も診療を続ける場合、区画を分けて順に工事し、音の出る作業は休診日や診療後に行い、仮の壁で粉塵と臭いを止めます。改修の考え方は増築・改修の前に確かめたい7つのこともご覧ください。
事例:CieR Clinic Kurosaki(北九州市八幡西区黒崎)
CieR Clinic Kurosakiは、元産婦人科の建物を内科クリニックとして全面改修した事例です。診療科が変わると、必要な設備や動線が違うため、間取りを一部見直しました。床・壁・天井を新しくし、グレーを基調に木目と間接照明を合わせた落ち着いた内装にしています。診察室・処置室は、医療機器を置きやすいレイアウトにし、看板・サインも一新しました。
このように、もとの建物の用途が違っても、間取りを見直すことで内科に合った動線をつくれる場合があります。ほかの事例は施工事例一覧をご覧ください。
よくある質問
Q. 発熱外来の入口は別にしなければいけませんか?
A. 建物の条件によっては別入口が難しい場合もあります。外から直接入れる診察室や、扉で区切った待機室、時間帯での運用などを組み合わせる方法もあります。求められる内容は保健所に確かめながら決めます。
Q. 換気はどのように分ければよいですか?
A. 発熱外来側の空気が一般の待合へ流れないよう、発熱側の部屋の空気を一般の待合を通さずに外へ出すのが基本の考え方です。具体的な方式は、建物の大きさや天井裏の条件を見てご提案します。
Q. 開業後に発熱外来のスペースをつくることはできますか?
A. できる場合があります。ただし入口や換気、トイレの配管は後から変えにくいため、開業前に下地・電源・空配管を用意しておくと、将来の工事を小さくしやすくなります。
まとめ
内科・小児科の発熱外来は、入口・待合・トイレを分け、換気で空気の流れを区切ることが基本です。小規模でも、外から入れる診察室や扉で区切れる待機室などの工夫ができます。新築と改修では確かめる相手や制約が違うため、計画の初めに審査機関・消防・保健所と並行して相談します。北九州市・下関市・福岡市で内科・小児科の開業や改修をお考えの先生は、早めにご相談ください。
クリニック アーキテクト プロでは、企画設計・プランニング・概算見積(たたき2案)まで無料でお受けしています。発熱外来の動線や換気の区切り方も、敷地や物件の条件に合わせてご提案します。無料相談はこちらからお気軽にお問い合わせください。