この記事の結論:整形外科のリハビリ室は、届け出る施設基準の面積を先に確かめたうえで、機器の台数と通路の幅から広さを決めます。あわせて、大型機器の搬入経路、床の耐荷重(床が支えられる重さ)、電源容量を図面の段階で確かめておくと、開業直前の手戻りを防ぎやすくなります。

執筆・監修:櫨本 健一(ハゼモト建設 代表取締役/一級建築士)

リハビリ室の適正面積はどう決めるか

リハビリ室の面積は、まず届け出る施設基準で求められる広さを確かめ、そのうえで置く機器と動き方から決めます。施設基準の面積は、どの区分で届け出るかによって変わり、改定されることもあります。具体的な数値は、先生や届け出先と確かめてから図面に反映します。

基準の面積は「最低限の広さ」です。実際には、ベッドや牽引機、ウォーターベッド型の機器、運動器具などの台数と大きさ、スタッフが付き添って歩く通路、車椅子の方が回れるスペースを足していくと、思ったより広さが必要になることがあります。開業時に置く機器だけでなく、将来増やしたい機器も書き出しておくと、区画や間取りを選ぶときの目安になります。

車椅子が回れる150cmの空き

整形外科では、待合・通路・リハビリ室に、車椅子が回れる直径150cmほどの空きをとることが目安です。機器のあいだを車椅子や歩行器で通るため、通路の幅にも余裕を持たせます。受付カウンターの一部を低くするなど、車椅子の方が使いやすい工夫もあわせて考えます。

大型機器の搬入経路を先に確かめる

搬入経路は、機器を決める段階で、入口・廊下・エレベーター(EV)の寸法を確かめておくことが大切です。機器が部屋に入らない、廊下の角を曲がれないといったことは、開業直前に分かると大きな手戻りになります。

  • 入口:扉の有効幅(扉を開けたときに実際に通れる幅)と高さ。自動ドアや風除室があれば、その寸法も確かめます。
  • 廊下:幅だけでなく、曲がり角で機器を回せるか。手すりや消火器などの出っ張りも含めて考えます。
  • エレベーター:テナントでは、かごの大きさ・扉の幅・積める重さ(積載荷重)をビル側に確かめます。入らない場合は、階段や窓からの搬入を検討することもあります。

医療機器メーカーから、機器の寸法・重さ・搬入時の姿勢(分解できるか)を早めに出してもらうと、経路の検討がしやすくなります。当社では着工前に、電気・水道業者、IT業者、医療機器メーカーが現場に集まる「設備の情報共有会」を開き、機器の位置や配線を確かめます。

床補強と耐荷重:新築とテナントの違い

重い機器を置く床は、新築なら梁(床を支える横の部材)の配置から補強を計画し、テナントなら床の許容荷重(床に載せてよい重さ)をビル側に確かめます。リハビリ機器やX線装置、CTは、置く場所に重さが集中するため、床の補強が必要になることがあります。

項目新築テナント・改修
床の補強機器の位置に合わせて、梁の配置や床の下地から補強を計画できる床の許容荷重をビル側に確かめ、足りない場合は置き場所や補強の方法を相談する
搬入経路入口や廊下の幅を、機器に合わせて設計できる既存の入口・廊下・エレベーターの寸法に合わせる
電源容量必要な容量を見込んで受電の計画ができるビルの契約容量や分電盤の空きを確かめる。増やす工事はB工事になることがある
X線室の遮蔽壁の中に鉛の遮蔽を入れた計画を最初から組める既存の壁・床・天井の構成を確かめ、隣の区画への影響も考える
確認する相手審査機関・消防・医療機器メーカー上記に加えてビルのオーナー・管理会社

テナントでは、ビル全体の空調・防災につながる部分がB工事(先生負担・オーナー指定業者の工事)になり、比べにくいことがあります。工事区分の考え方は建築費・内装費の決まり方もご覧ください。

電源容量は機器リストから逆算する

電源容量は、置く機器の消費電力を一覧にして、同時に使う台数から必要な容量を見込みます。リハビリ機器は1台ずつの容量が小さくても、台数が多く同時に動かすため、合計すると大きくなります。X線装置などは、専用の回路が必要になる場合があります。

コンセントは機器の配置に合わせて位置と高さを決め、将来機器を増やせるよう予備の回路や空配管(あとから線を通すための管)を用意します。施工中は、新築なら上棟後、改装でも壁や天井のボードを張る前に、コンセント位置や器具の高さを先生に現場で確かめていただきます。

X線室の遮蔽は早めに位置を固める

X線室は、壁や扉に鉛の遮蔽(放射線を通さないための板)を入れるため、位置を早めに固めることが大切です。後から場所を動かすと、遮蔽をやり直すことになります。遮蔽の範囲や厚みは、装置の種類や部屋の配置によって変わるため、医療機器メーカーの資料をもとに決め、必要な届け出は届け出先に確かめます。

受付やリハビリ室との位置関係も大切です。患者さんが撮影のあとにすぐ診察室やリハビリ室へ移れるよう、通路を短くまとめます。整形外科ならではの工事内容は、ほかに配管や内装の考え方もあります。費用の目安は内装費用の目安と進め方をご覧ください。

事例:浜田クリニック/わたなべ整形外科クリニック

浜田クリニックでは、CTを置く位置に合わせて、梁の配置から床を補強しました。重い機器の位置を設計の初めに決めておくことで、構造の計画に組み込めた事例です。

また、わたなべ整形外科クリニックの増築も手がけています。増築・改修を考えるときのポイントは増築・改修の前に確かめたい7つのことにまとめています。ほかの事例は施工事例一覧をご覧ください。

よくある質問

Q. リハビリ室の広さはどのくらい必要ですか?

A. 届け出る施設基準で求められる面積を確かめたうえで、機器の台数・通路・車椅子が回れるスペースを足して決めます。基準の数値は区分や改定によって変わるため、届け出先と確かめてから図面に反映します。

Q. テナントの床に重い機器を置いても大丈夫ですか?

A. 床の許容荷重はビルによって違うため、ビル側に確かめます。足りない場合は、置き場所を変える、重さを分散させるなどの方法を検討します。

Q. 機器の搬入はいつ確認すればよいですか?

A. 機器を選ぶ段階で、入口・廊下・エレベーターの寸法と、機器の大きさ・重さ・分解できるかを確かめることをおすすめします。物件を決める前に確かめられると、さらに安心です。

まとめ

整形外科のリハビリ室は、施設基準の面積を確かめたうえで、機器・通路・車椅子の150cmの空きから広さを決めます。大型機器の搬入経路、床の補強と耐荷重、電源容量、X線室の遮蔽は、図面の段階で医療機器メーカーやビル側と確かめておくことが大切です。北九州市・下関市・福岡市で整形外科の開業や増築・改修をお考えの先生は、物件選びの段階からご相談ください。

クリニック アーキテクト プロでは、企画設計・プランニング・概算見積(たたき2案)まで無料でお受けしています。テナントや土地の情報をお探しの方は物件リクエストもご利用いただけます。無料相談はこちらからお気軽にお問い合わせください。