歯科クリニックを新しく開業するには、準備から開院まで、いくつもの段階があります。このコラムでは、開業までの流れ、土地や物件の選び方、資金計画、建物のデザインと設備の考え方を、建築の側から順に説明します。

開業までの流れとスケジュール
開業までの流れを先に思い描いておくと、各段階でやることの順番が見えてきます。おおまかには、次のような順で進みます。
- 診療のコンセプトと、地域での位置づけを決める
- 資金計画を立てる
- 土地や物件を選ぶ
- 設計を進め、見積もりを確認して契約する
- 工事を行う
- 医療機器の導入、スタッフの準備、各種手続きを進める
- 開院する
診療所の開設には、届出などの手続きが必要です。内容は、保健所や歯科医師会などの窓口で確かめます。
物件選びや内装の計画より先に、資金の計画と診療のコンセプトを固めておくと、あとの判断がぶれにくくなります。医療機器の選定やスタッフの準備は、物件が決まったあとに具体的に進めるのが一般的です。
開業までの期間の目安
当社の目安では、テナント内装は着工から約10週間です。木造平屋の新築は、着工から3か月、その前に申請の準備が1〜2か月あり、開院まで約6か月です。案件によって変わります。開院の日から逆算して、各段階の時期を決めていきます。
ロードマップをつくる
開業までのロードマップは、次の考え方でつくると進めやすくなります。
- 目標を決める:地域に根ざした医院を目指す、など、方向を言葉にします。
- 行うことを並べる:目標に向けて必要な作業を書き出し、日程に沿って進めます。
- 期間を決める:開業の日から逆算して、それぞれの作業の時期を決めます。
- 資金と人手を整える:必要な資金や人手、物件を、順に用意します。
- 途中で見直す:進みぐあいを確認し、必要に応じて計画を直します。
診療科目と、地域のニーズ
診療科目や診療の進め方は、建物の計画にも関わります。次の点を考えて決めていきます。
- 地域のニーズ:開業する地域の人口構成や、近くの医療機関を調べます。
- 先生の専門と経験:ご自身の専門性を生かせる診療を考えます。
- 医院のコンセプト:医院の特色や強みに合う診療を選びます。
- 患者様の層:高齢の方、子どもなど、主に来院される方を想定します。
土地・物件の選び方と契約
土地や物件は、診療所の立地として、患者様の通いやすさに関わります。選ぶときは、次の点を確かめます。
- 立地:患者様が通いやすい場所か。近くの歯科医院との距離はどうか。
- アクセス:駅やバス停からの近さ、車で来る方のための駐車場。
- 地域の人口と年齢層:医院の診療と合っているか。
- 賃料と広さ:事業計画に合った賃料か。診察室や待合室を置ける間取りか。
- 周辺環境:地域の方との関係、駐車場の確保などを確かめます。
賃貸物件の契約では、契約の期間、更新の条件、解約の条件と違約金、退去するときの原状回復の範囲を確かめます。
建築の側から土地・物件を見る
土地の価格だけでは、造成、地盤、給排水の引き込みなどにかかる費用が見えません。候補の土地や物件が出た段階で、建てる側の目で見た気づきをお伝えします。
資金計画
開業の資金は、複数の方法を組み合わせて用意します。それぞれの特徴を確かめて、状況に合わせて選びます。
- 自己資金・家族からの借入:金利の面で利用しやすい一方、負担もあります。
- 銀行からの融資:事業計画書の提出や審査があります。
- 医療に詳しい金融機関からの融資:医業を踏まえた相談ができます。条件は機関ごとに異なるため、比べて検討します。
- 助成金・補助金:対象となる事業や条件が制度ごとに決まっています。使えるかどうかは、窓口で確かめます。
建築費の計画では、当社の目安として、テナント内装で坪100万円前後、木造平屋の新築で坪110〜120万円程度です(税別・医療機器を除く)。予備費は総額の5%ほどを見込みます。ただし案件によって変わります。
建物のデザインと内装
建物のデザインと内装は、患者様の過ごしやすさと、スタッフの働きやすさに関わります。次の点を考えて、計画を進めます。
- 動線:院内の動線が分かりやすく、患者様が迷いにくいこと。
- 面積と間取り:限られた面積を生かして、診療のスペースを確保すること。
- 待合室:落ち着いて過ごせる空間であること。座席の数と質、周りの視線への配慮。
- 内装と照明:やわらかい照明と、落ち着いた色調で、診療室の雰囲気を整えること。
- 設備・機器の配置:治療に適した配置にすること。
予防・治療・事務の機能を合わせた設計
歯科医院の設計では、予防、治療、事務所の機能をバランスよく合わせることが大切です。
- 予防:待合室やカウンセリングの場所を、落ち着いた雰囲気にする。
- 治療:診察室の広さと配置を、機器とスタッフの動線に合わせて決める。
- 事務:スタッフが円滑に仕事を進められるよう、事務スペースの広さ、設備、収納を計画する。
待合室・受付
シンプルな意匠と落ち着いた色調で、清潔感と安心感のある待合室と受付にします。照明、家具の配置、待ち時間に過ごせるものの用意(雑誌、Wi-Fiなど)も、過ごしやすさに関わります。受付には、案内が分かりやすいカウンターや案内表示を設けます。

設備・機器の導入と配置
設備や機器は、建物の計画と一緒に考えます。建物の設計が固まってから機器の話を始めると、配管、電源、床の強さの条件が合わなくなることがあるためです。
- 電源と配管:機器に必要な電気容量、給排水、エアーの接続位置。
- 床の強さ:CTなど重い機器を置く場所の補強。
- 搬入の経路:大きな機器が、入口や廊下を通れるか。
- 維持管理:導入のあとの保守や、故障のときの対応窓口。
ビルやマンションでの開業
ビルやマンションのテナントで開業するときは、物件の立地と周辺環境に加えて、次の点を確かめます。
- 内装・設計:診察室や待合室のレイアウト、医療機器の配置。
- 建物のルール:オーナーや他のテナントとの関係、工事の時間帯の取り決め。
- 賃貸契約:契約の条件に不備がないかを確かめ、必要があれば修正を相談する。
開院のあとも、建物とお付き合いします
開院のあとも、建物の点検や小さな直しは続きます。不具合には、診療を止めないことを第一に、休診日や診療時間外にも対応します。
まとめ
歯科の新規開業は、診療のコンセプト、土地や物件、資金計画、建物のデザイン、設備と、順に確かめることが多い道のりです。一つずつ進めることで、開院までの見通しが立てやすくなります。
クリニックアーキテクトプロでは、建物の側から、開業をお手伝いします。企画設計・プランニング・概算見積(たたき2案)までは無料で承っています。そのうえで、設計と施工を一社で担当します。土地や物件については、候補が出た段階で、建てる側の目で見た気づきをお伝えします。
これから開業される先生を、建築の面から応援しています。医院づくり全体の流れはクリニック建築の進め方に、よくあるご質問はよくある質問のページにまとめています。ご相談は無料相談のページからお受けしています。