この記事の結論:ユニット増設や医療機器の更新は、機器を置く場所よりも先に「配管が床下を通るか」「電気が足りるか」を確かめることが大切です。床下の高さと排水勾配、エア・バキュームの能力、分電盤の空きと契約電力、三相200V、LANを着工前に調べ、テナントではビル側との調整を早めに始めると、工事中の追加や診療への影響を小さくできます。

執筆・監修:櫨本 健一(ハゼモト建設 代表取締役/一級建築士)

増設・更新で問題になりやすいのは「見えない部分」です

問題になりやすいのは、床下・天井裏・分電盤といった目に見えない部分です。歯科ユニットは1台ごとに給水・排水・エアー・バキューム・電気の配管が必要で、CTやX線装置、コンプレッサーは大きな電源を使います。開業時の設計が「今の台数」にぴったり合わせてあると、1台増やすだけで床を広く開けたり、電気の引き込みからやり直したりすることがあります。

北九州市・下関市・福岡市の医院でも、先に建物側の条件を調べてから機器の位置を決めるほうが、費用と工期を読みやすくなります。

ユニット増設の前に確かめたい7つの項目

着工前に確かめたいのは、床下の高さと排水勾配、給水・エア・バキュームの能力、分電盤の空き、契約電力、三相200V、LAN、そして床を開ける範囲の7つです。下の表に、確かめる内容と、足りなかったときに起こりやすいことをまとめました。数値はあくまで一般的な目安で、実際は機器メーカーの設置条件と現地調査で決めます。

確かめる項目見るポイント足りないときに起こりやすいこと
床下の高さと排水勾配新しいユニットから既存の排水管までの距離と、床下に取れる高さ勾配(水が流れるための傾き)が取れず、床を上げる・ルートを変える工事が加わる
給水・エア・バキュームコンプレッサーとバキュームの能力が、増やす台数に足りるか本体の入れ替えや、置き場所・配管の追加が必要になる
分電盤の空き専用回路を増やせる空きがあるか、幹線(分電盤までの太い電線)の太さ分電盤の増設や交換、幹線の引き直し
契約電力今の契約で、増やした機器を同時に使っても足りるか電力会社への申し込みや、受電設備の見直し
三相200V動力(三相200V)が建物に来ているか、容量に余裕があるか動力の引き込みや、ビル側の設備改修が必要になる
LAN電子カルテ・画像・予約の機器をつなぐ口と予備の配管露出配線になる、壁を開け直す
床を開ける範囲配管ルート上の既存の床・家具・機器開ける範囲が広がり、休診日数が増える

床下の高さは「排水の勾配」から逆算します

床下の高さは、排水管の勾配から逆算して決めます。排水管は管の太さにもよりますが、一般的に1/50〜1/100程度の傾きが目安とされ、既存の排水管から離れるほど床下に必要な高さが増えます。土間の店舗跡を使った医院では、床を250〜300mmほど上げて配管の通り道をつくり、水まわりが既存の排水から6mを超える場合は350〜400mmほど見込むこともあります。床を上げた分だけ天井は低くなります。掃除口(詰まったときに管を掃除する口)の位置は現場で決めます。

エアー・バキュームは「台数」で能力が決まります

コンプレッサーとバキュームは、同時に使うユニットの台数で必要な能力が変わります。1台増やすだけでも、既存の機械では足りない場合があります。機械を大きくすると音と熱も増えるため、機械室や屋外の囲いなど置き場所も考えます。

電気は「分電盤」「契約電力」「三相200V」を分けて見ます

電気は、分電盤の空き、契約電力、三相200Vの3つを分けて確かめます。分電盤に空きがあっても、建物全体の契約電力が足りないことがあります。一般に、契約電力が大きくなり50kW以上になると高圧での受電(キュービクルと呼ばれる受電設備)が必要になる場合があり、費用と期間が大きく変わります。CTやコンプレッサー、業務用の空調は三相200Vを使う機種が多いため、メーカーの設置仕様書を早めに取り寄せ、電気業者と照らし合わせます。

テナントでは「B工事」の調整を最初に始めます

テナントの医院では、ビル側の工事にあたるB工事の調整を最初に始めるのが近道です。B工事は先生の負担でありながら、ビルのオーナーが指定する業者が行う工事で、ビル全体の空調・防災・電気の幹線などにかかわる部分が含まれます。動力の引き込みや共用の排水管への接続などはB工事になりやすく、比べにくい部分です。

小倉北区の小倉あんざい歯科・歯周病クリニックでは、配管の通り道・床の高さ・B工事との取り合いを着工前にビル側と確認し、診療チェアの配管とCTの位置を先に決めてから内装に進みました。増設の場合も同じ順番が有効です。A工事・B工事・C工事の区分は建築費・内装費の決まり方でも紹介しています。

休診日施工は「区画を分けて」計画します

診療を止めずに工事するには、区画を分けて順番に進める計画が基本です。音や粉塵の出る作業は休診日や診療後にまとめ、仮の壁で粉塵と臭いを止め、家具や部材は工場で先に加工しておきます。福岡市のよつば歯科クリニック 姪浜院では、休診日の木曜・日曜と夜間を使い、4日間に分けて区画ごとに部分改修を行いました。八幡西区のかわかみデンタルクリニックでは、お盆休みの10日間で床・壁・天井の張り替えなどを終えています。

既存の床を開ける範囲は「配管ルート」で決まります

既存の床をどこまで開けるかは、新しい機器から既存の配管までのルートで決まります。床下に点検口や空配管(あとで配線・配管を通すための空の管)があれば、開ける範囲を小さくできる場合があります。CTのように重い機器では、床の補強が必要になることもあります。浜田クリニックでは、CTを置く位置に合わせて梁の配置から床を補強しました。

あわせて、古い建物では今の基準に合っていない「既存不適格」の部分が見つかり、一緒に直すことがあります。改修前の確認点は増築・改修の前に確かめたい7つのことにもまとめています。

メーカー・業者が集まる「設備の情報共有会」が近道です

手戻りを減らす近道は、着工前に関係者が現場に集まって位置を確かめることです。クリニックアーキテクトプロでは、電気・水道業者、電子カルテ・レセコンのIT業者、医療機器メーカーが現場に集まる「設備の情報共有会」を開き、先生・医療機器メーカー・建築会社の三者で配管とLANの位置を決めます。壁や天井のボードを張る前には、コンセント位置や器具の高さを先生に現場で確かめていただきます。

よくある質問

Q. ユニットを1台増やすだけでも、床を開ける必要がありますか?

A. 多くの場合、給排水・エアー・バキュームの配管をつなぐために床を部分的に開けます。開ける範囲は既存配管までのルートや点検口の有無で変わるため、現地調査で確かめます。

Q. 医療機器を更新すると、電気の契約も変える必要がありますか?

A. 機器の消費電力や三相200Vの要否によっては、契約電力の変更や分電盤の増設が必要になる場合があります。メーカーの設置仕様書をもとに、電気業者と事前に確かめます。

Q. テナントの医院でも、休診日だけで工事できますか?

A. 区画を分けて順番に進め、音の出る作業を休診日や診療後にまとめることで対応できる場合があります。ただしB工事はビル側の業者の日程にも左右されるため、早めの調整が必要です。

まとめ

ユニット増設や医療機器の更新では、機器を置く場所より先に、床下の高さと排水勾配、エア・バキュームの能力、分電盤・契約電力・三相200V、LANを確かめることが大切です。テナントではB工事の調整を最初に始め、工事は区画を分けて休診日に計画すると、診療への影響を抑えやすくなります。将来の入れ替えに備えて、点検口と空配管を残しておくことも有効です。

クリニックアーキテクトプロでは、企画設計・プランニング・概算見積(たたき2案)までは無料です。ユニット増設や機器更新の前に、今の建物で何ができるかを一級建築士が一緒に確かめます。お気軽に無料相談からご連絡ください。